グラフィックデザインの雨音

グラフィックデザイナー志望者&初心者に語りかけるブログ

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グラフィックバー[雨音] ある夜の客の愚痴

20150128-1.jpg

もうすぐ2月になろうかというある冬の長雨の夜。
大阪は梅田の路地にひっそりと佇む静かなバー[雨音]のカウンターに、今宵もひとりの悩める若いデザイナーがいた。

「今日は珍しくおひとりですね。」

客に気を使って滅多に自分から話しかけないマスターが、店内にひとり残った若い男にめずらしく声をかけた。

「ええ、仕事でいろいろあって・・・。一杯飲まないとやってられへんなぁと・・・。」

「確か、広告代理店のお仕事をされてるんですよね。」

え?と少し驚いた目を上げた男は、すぐに以前この店で同僚たちと仕事の話をしたことを思い出した。

「よく覚えてますね。さすがバーのマスターやな。たしか・・・、デザオさんでしたよね?」

「いやぁ、お客さんのほうがよく覚えてはるわー。」

マスターは軽く笑いながら、一瞬のためらいの間ののち、

「私も昔、ちょっとだけ広告やってたもんですから・・・。」

とボソっとつぶやいた。

「え!?そうなんですか?」

「ええ、まぁ」

「じゃあ、業界の先輩だぁ。」

「いやいや、私なんて細々やるのが好きな変わり者ですから、代理店の方のような大きなお仕事とは縁がありませんので」

「大きな仕事ねぇ・・・。」

若い男は、ふと仕事を思い出し、グラスに目を落とした。


とうに日付も変わり、雨もやまず、幸いほかに客が来る様子もない。男はちょっと愚痴でもこぼしてみるかと考えた。

「大きな仕事かもしれないけど、大きな仕事は関わる人が多くて、ほんと融通が効かないんですよ。ある車の会社の広告やってるんですけどね、伊丹のほうにある大きなスタジオで、もう普通に映り込みのないちゃんとした車の写真を撮るだけです。何にも面白くない。でも昔と違って、何か映り込んでたとしてもフォトグラファーにお願いしてフォトショップで修正してもらうだけなんですけどね・・・。」

「面白くないですか。」

「面白くないです。大手の仕事だから、新人のころは友達に自慢したりもしたんですけどね。もう会社は、クライアント様の言いなり。右と言えば、はは~っ!と右へ行くし、左と言えばまたしかりですよ。すこし奇抜なアイデアをだそうとしたら、クライアントにとめられるんじゃなくって、上司にとめられるんです。余計なことするな!切られるリスクも考えろって・・・。私もね、それじゃあ仕事が面白くないので、じゃあ、何案か提案したらいいだけじゃないですかって言ったんですよ。そしたら無駄な労力をかけるな。お前の残業代も、外注費も、会社の金やぞって。」

「なるほどね」

「それで・・・。予算は大きいけど、ひーひー言いながら、出来上がってみれば何にも驚きのない普通の車の広告と、普通の車のカタログができただけですよ。もちろん、自分としてはがんばってるのでデザインもちょっといいものになってると思いますよ。でも、お客さんから見たら普通ですよ、普通。」

「もっと面白いアイデアの広告ができるはずなのに?」

「いや、どうかな~。そう言われるとわからないけど、とにかく今がガチガチ過ぎて、息が詰まるんですよ。」

「でも、代理店のお給料も悪くないから辞められない。」

男は、はっとした顔をしてグラスを拭くマスターを見た。

「そうなんですよね。今の時代、この会社を辞めて自分に何ができるのかって考えると、急に不安になるというか、自信がなくなるというか・・・。仕事では若いくせに偉そうにしないと回らないから、その立場の演技をしてるんですけど、会社のおかげで仕事が回っているだけで、自分個人で何ができるのかって言われるとわかりません。」

「じゃあ、今夜からはそれを考えはったらどうですか?別に無理していそいで会社を辞めることを考えんと、辞めたくなったときに辞めれるように、自分にできるスキルを確実に増やしはったらいいんとちゃいますか。」

急に本当に先輩のような口ぶりで話しだしたマスターにちょっと戸惑いながらも、若い男の顔に、少し晴れ晴れとしたものが戻ったようだった。

「そうですよね!しばらくは自己啓発計画でも作ろうかな!うん。そう。そうですよね。」

ひとりごとのようにそう言うと、若い男はおもむろにグラスに残った酒をぐいと飲み干し、足元においていた黒いカバンを手にとった。

「さぁ、帰ろうかな。まだ火曜やし!明日もがんばらなくちゃあ。」

「はい、いつもありがとうございます。2600円です。傘、忘れんようにね。」

こうして最後の客は梅田の街に消えていったのでした。

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